新潟家庭裁判所長岡支部 事件番号不詳 決定
少年 Y(昭一五・四・二四生)
主文
少年を特別少年院に送致する。
理由
(本件の非行事実)
少年は、
第一 (暴行)
(1) 昭和三三年一〇月五日午後七時頃、自転車に乗つて新潟県○○○郡○○町大字○○地内を徘徊中、たまたま通りかかつたF子(当三〇年)を追尾したうえ、同所地内道路上において、背後から襟首をつかんで同女に暴行を加え、
(2) 同年一一月一二日午後七時三〇分頃、自転車に乗つて同所地内を徘徊中、たまたま自転車に乗つて通りかかつたT子(当二二年)を追尾した上、同所地内道路上において突如背後から同女の着衣をつかんだり、自転車を接触させたりして同女を路上に転倒させ、更に背後から同女を抱きしめる等の暴行を加え、
第二 (窃盗)
(1) 同年一二月五日午後六時三〇分頃、同町所在○○高等学校体育館用具室内において
(イ) 同校生徒A所有の腕時計一個及びジヤンバー一着(時価合計約五、三〇〇円相当)
(ロ) 同B所有の腕時計一個(時価約三、八〇〇円相当)を窃取し、
(2) 同月一六日早朝宿泊していた埼玉県熊谷市○○町○○○番地○○旅館ことC子方において、
(イ) D所有の現金二〇〇円の外背広上下一着及びズボン一本(時価合計約七、二〇〇円相当)
(ロ) E所有の白革短靴一足(時価約二、〇〇〇円相当)を窃取し、
(3) 昭和三四年二月五日午前四時三〇分頃、宿泊していた新潟県○○○市○○町大字○○○○○○番地、○○○旅館ことG方において、H所有の現金六〇〇円を窃取し、
第三 (強盗等)
(1) 昭和三四年二月五日午前零時頃、○○○市大字○○町○○○番地I方前附近路上において、通りかかつたJ子(当二二年)を強盗の目的をもつて追尾したうえ、突如同人の面前に立ち塞がり所携の鉄管(長さ約一米)を突出し「声を出すとこれだぞ」等と申向けて脅迫し、その反抗を抑圧したうえ、同人所有のハンドバツク(スカーフ等在中)一個(時価約一、五九〇円相当)を強取し、
(2) 同年二月五日午後七時三〇分頃、同市大字○○○○○○番地の一先路上において、たまたまK子(当一七年)が通りかかるや、強盗の目的をもつて同女を追尾したうえ、突如背後から両肩を抱えて同女を路上に転倒させ、更に同女の体を押えつけたり口を塞いだりしてその反抗を抑圧したうえ同女の着衣を物色したが、同女が現金等を所持していなかつたため所期の目的はこれを遂げなかつたけれども、その際、右暴行によつて同女に全治まで約三日間を要する上下口唇擦過傷の傷害を負わせ、
(3) 同日午後九時三〇分頃、同市大字同○○○番地L方前附近の路上において、たまたまM子(当一九年)が通りかかるや、強盗の目的を以て、同女を追尾したうえ、突如背後から口を押えつけて同女を路上に転倒させ、なおも口を押える等してその反抗を抑圧したうえ、同女の着衣を物色し、更に同市大字同○○○番地N方裏附近の路上まで追尾して足払いをかけてその場に転倒させ馬乗りになり、少年の口を同女の口部に強く押しつけ等してその反抗を抑圧して、金五〇円を強取し、その際右暴行に因つて同女に全治まで約四日間を要する上口唇部糜爛の傷害を負わせ、
たものである。
(適条)
第一の各事実 刑法第二〇八条罰金等臨時措置法第二条、第三条
第二の各事実 刑法第二三五条
第三(1)の事実 刑法第二三六条第一項
同(2)(3)の各事実 刑法第二四〇条前段
(主たる問題点並びに処遇意見)
(1) 少年は、貧窮と流浪とを続け保護能力も充分でない朝鮮人の実父母とともに、大阪、岡山、東京、新潟等の各地を転々し、初等教育も充分履修する機会を与えられなかつたものであつて、その生育史は極めて不遇であり、知能も稍低く(昭和三四年三月一一日IQ=92)、一四歳時「窃盗」の非行初発をみて以来、すでに東京家庭裁判所八王子支部において、昭和三〇年一〇月二六日「窃盗」により保護観察処分決定を、同年一二月二八日「強盗」により初等少年院送致決定をそれぞれ受けて、その頃○○少年院に収容せられた後、なおも「窃盗」を累行したため、昭和三二年六月八日東京家庭裁判所において、中等少年院送致決定を受け、その頃○○農芸学院に収容せられて昭和三三年八月同学院を仮退院したが、実父との融和に欠けるところがあり、勤労意欲も充分でないうえ、非行に対する反省も不充分なまま、各地を放浪しては金銭に窮し、その結果本件非行の大部分を犯すに至つたものである。
(2) そこで、当裁判所は、昭和三四年三月一六日少年に対しては本件を刑事処分に付するのが相当であるとして、少年法第二〇条により検察官に送致する旨の決定をし、新潟地方裁判所長岡支部において審理せられていたところ、同年七月二七日同裁判所は、少年が更生への意欲をみせているうえ、家庭環境も改善されているから、少年はまだ収容教育を施すことによつてその犯罪的傾向を矯正する余地があるとして、少年法第五五条により再び当裁判所に移送する旨の決定をするに至つたものである。
(3) 以上の事情を総合してみると、少年は、その資質及び環境にまだ深刻な多くの問題を有しており、すでに前記被収容経験を有することと相俟ち、矯正教育の困難性を感ぜしめるものはあるが、前記のとおり刑事処分に付せらるべき事態に当面して示すに至つた非行に対する反省と更生への意欲並びに保護者側の反省と経済的余力を有するに至つた家庭環境の改善に徴すれば、すでに五ヵ月余に及ぶ未決拘禁に引続き、更に相当期間施設に収容のうえ、規律生活のもと基礎的知育、徳育と職業補導等とを併せ施すことによつて社会生活上の自信を体得させる等、まだ、矯正教育によつて社会適応性を得しめる余地あるものと思料し、少年法第二四条第一項第三号少年審判規則第三七条第一項少年院法第二条第四項により主文のとおり決定する。
(裁判官 川瀬勝一)